仲間達に見送られて次の世界へと渡ったハイネ。
今度こそ懐中時計を壊さないように、大穴を落ちていく段階から時計を胸に抱え込んで受け身の姿勢をとる。
ギュッと目を瞑って次の世界の手招きを待った。
いつもは落ちている間に気絶してしまい、世界を移動している感覚というものがいまいちわからなかった。
意識を失くし、目が覚めると新しい大地に大の字で倒れている。
毎度頭をぶつけて呻いているが、もう三度目だ。そろそろ無傷で到着したいところである。
――そう思っていたが、結局気絶していたようだ。
「ぎゃあ!!」
「ひいいっ!!」
突然何かとぶつかった衝撃でハイネは悲鳴を上げる。
同時に、すっかり油断していたような別人の甲高い悲鳴も上がる。
どうやら誰かの上に落ちたようだ。
ゆるゆると起き上がったハイネだが、下敷きの人物より先に懐中時計の安否を確認する。
開いてみるとカチカチと正常に動いているようだ。壊れた様子はない。
ホッ、と安堵の溜息を漏らしたところで、抗議する拳が床をペシペシと叩いた。
「ちょっと!! いつまで乗ってるつもりですか!!
無礼な子供だなぁ!!」
怒声にバランスを崩したハイネが思わずその人物の胸に手を付いてしまい、「ぐえ」と情けない声が続く。
ごめんなさい、と退こうとしたハイネなのだが、下敷きの人物の顔を見て真っ青になってしまった。
「え……、か、カイヤ先生……――!? おっぱいがない!?」
「ど、どこ触ってるんですか、バカ!!」
真っ赤になって叫んだその人物の声に驚いたのか、突然ガラッと扉が開いて別の人物が乗り込んできた。
「どうしたんだいアイレス!? ……――アァッ!! ごめん!! 取り込み中だった!!」
乗り込んできた人物はそう謝るや否や秒で扉の向こうに消える。
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