「……ってなワケで、うちの次の行先が決まりました」
ハイネは懐中時計を片手に胸を張る。
「よかったな、ハイネ。
いよいよ旅立ちか」
ヒューランは嬉しそうに、しかしどこか寂しげに微笑む。
「うちもぶっちゃけここで詰みかと思っとったよ~。
飛ぶための魔力はカイヤ先生がくれたし!」
隣で気まずそうに苦笑いを浮かべるカイヤ。
「まさか私自身がこんな量の魔力を生産するなんて……。
もはや黒歴史なので、どうぞ盛大に使い果たしてください……」
カイヤが邪なる者になった際の魔力を、どういう訳かこの懐中時計が吸い取っていたのだ。
半悪魔の血を引くカイヤの狂った魔力回路は、とんでもない規模の魔力を秘めていた。
偶然の収穫ではあるが、次の世界への燃料確保に悩んでいたハイネにとっては願ってもない副産物である。
「で、アイレスさん……くん?が向こうの世界とこことの距離を教えてくれたんよ。
そこから必要な魔力を計算してその分だけ使って飛べば、確実に向こうの世界に渡れるって事。
行先が確定したのは初めてや……」
「懐中時計を向こうの座標と繋げた際に、使用魔力量を調整できる仕組みも入れておきました。
今までは制御が利かなくて、入ってた魔力の分だけ飛んでたそうで……。
そりゃあ何処に飛ぶか皆目見当も付かないってわけですよ」
だがあいにくと、肝心の飛ぶ方法はやはりゲートのようだ。
またあの大穴に飛び込むのかと考えると若干憂鬱だが、今回は二度目で行先も決まっているとなると随分と気が楽だ。
「なんか、向こうでここのゲートと繋げられる仕組みがあるらしくて。
せやから今度は迷子にならんでアイレスくんって人と合流できると思う。
心配せんといてな」
「では、私達の最後の役目はハイネを『ゲート』まで無事送り届ける事、という訳か。
確か中央海域の小島だったな? どうやって行くのだ?」
アメリの疑問にはカイヤが応えた。
「カルル村から船に乗りましょう。
船乗りさんは嫌がるかもしれないですけど、そこは私が札束で何とかしますから」
ふふん、と彼女は笑う。実に心強い言葉だ。
「そんじゃー早速行こうよ!
ボクまた船乗れるの嬉しい!」
「はう……。でももうすぐハイネさんとお別れデス……。
ミー、ちょっぴりセツナイですヨ」
「せやなぁ。いろいろあったけど、皆にはすっごく感謝しとる!
最後までよろしく!」
ハイネ達は荷物をまとめ、クルトの街を発った。
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