カレイドヴルフ軍、ミストルテイン軍。
そのどちらもが、訓練された1つの騎士団として先頭のヒューランに付き従う。
向かい来るブランディア兵を馬上からヒューランが次々と斬り倒していく。
まるで踊るように、鮮やかに。
後ろにハイネを乗せているというのに、彼の動きは的確に敵の数を減らしていった。

「ハイネ、大丈夫か?」

「う、うちは大丈夫……!」

というか、まともに目を開けていられない。
しがみついていないと振り落とされそうだ。

「ヒューラン様!
向こうにヴィオルが!」

「我々が道を切り開きます! さぁ!」

碧の兵が声を上げる。
頷いたヒューランは、刃の血糊を振り払い、持ち直す。

「ハイネ。いいか、馬から絶対降りるな。手を離すな。
――行くぞ!」

「わ、わかった!
行って、ヒューラン!!」

碧の兵が開けた道を、ヒューランとハイネを乗せた馬が全速力で駆け抜ける。
その先には、『王』がいた。



「ヴィオル――――ッ!!!」

馬上を足場に、ヒューランは騎馬の速度をその身に乗せて飛び出す。
その刃は一直線に心臓を狙っていた。

「このクソガキが!!
よくも!! 俺の領域を荒らしまわってくれたなぁ?!」

キンッ、と甲高く弾かれる刃の音。
だがヒューランの剣の勢いはヴィオルの刃を砕いた。

「一度だけ問う。
これまでの悪行をすべて償うべく、余生は暗闇で過ごすか?」

「ハッ! 小生意気な。
牢獄行きは貴様の方だ、ヒューラン!!
惨たらしく痛めつけてゆっくり殺してやる!!」

「……そうやって、貴殿は多くの人々を、葬ってきたのだろうな」

つと、ヒューランの瞳は細まる。
憐れみのようなその表情は、ヴィオルにとってはこの世で最も軽蔑を示すものだった。
ニタリと笑ったヴィオルの空いた左手が、指で何かを形作る。

「――ッ、ヒューラン!!」

気付けば、ハイネは馬上から飛び降り、ヒューランを突き飛ばしていた。
その背に刺客が迫っていると知りながら……――





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