すっかり怪我が治った両国王に呼ばれ、ヒューランは玉座に向かう。
話の内容はもうわかっている。
アメリの言う通りだ。
「さて、ヒューラン。
今一度確認しておきたい。
君は私の軍とコーネルの軍、両方を率いるという覚悟はあるかね?」
「はい。多大な力添え、本当に感謝しています。
貴重な軍を預かるのです。必ずや、ヴィオルを止めてみせます」
「うむ! よく言った。
それで、だ。どうやら君の従者が、アルマツィア側にも何らかの手を回していたようなのだ。
なかなか抜け目のない……ゴホン! 気の利く男だ。
事実、ルベラ殿が時間を稼いでくれなければ大損害を食らっていたところだろう。
最悪再起不能まで陥っていたかもしれない。
もちろん碧の国としても白の国への礼は手厚く贈らせてもらうが、いずれ君が王となる赤の国としても、何か手を考えておいた方がいい。
はは、老婆心かもしれないが、まぁ国王としての矜持を聞いたとでも思っておいてくれたまえ」
「提言、感謝します」
「あぁ、それからアメリのことなのだが……。
これは君から言ってくれないか、コーネル」
「いいだろう」
少し気まずそうな、それでいて落ち着かない素振りのコーネルは、眉間に寄った皺をほぐしてからヒューランに顔を向ける。
「ヒューラン。もし貴殿が赤の国の王として即位する未来を掴めたとしたら。
……アメリを、もらってやってくれないか。
あぁいや、貴殿が望むのなら、だが……」
「何を弱気になっている、コーネル!
……アメリはすでに了解している。だから、後は君の気持ち次第だ」
「……恐れ多い。
でも、ありがたいお話ですので、しっかり考えさせていただきます」
空気が漏れるような吐息が微かに聞こえた。
――コーネルだ。
そうだよな、そうだ、まだ早い、などと何故か自分に言い聞かせている。
「さぁ、それでは出陣の準備に取り掛かってくれ。
我が軍は全員、いつでも出発できるぞ!
あの忌々しい赤の軍をボコボコにしてやりたまえ!!」
深々と頭を下げたヒューランは、くるりと背を向けて玉座を後にした。
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