前線に至ると、碧の軍がかなりのダメージを受けていた。
仲間達はといえば、兵に混ざって戦ってはいるが傷だらけである。
シエテなど、四肢が吹き飛んで転がっている始末である。
そんな彼の体の部品を、イザナが半泣きで集めまわっているのが見える。
「ちょ、ちょっとシエテ?!
何が起きたんよ?!」
「どっか弱点ないかな〜って探しに行ったんだけど、ブッ飛ばされて手足もどっか行っちゃったんだよねぇ。
再生するまで当分かかりそう〜」
「ヒューラン達は……?!」
「向こうにいるよ〜。
でもヒューランが怪我したみたい」
「あかん、治療せな……」
「いや、ハイネ。君は丸腰だ。前に出たら危ない」
「でも!」
そんなやりとりの後ろから、ざわめきが起きる。
「陛下?!
陛下が何故ここに!!」
思わず振り向くと、そこには武装した国王2人がそれぞれの馬に跨っていた。
その手に握られているのは、まばゆい光を放つ宝剣だ。
「ふっ。実戦は久しぶりだな?」
「あぁ、まったく。だが簡単にやられるつもりはない!」
どっ、と駆けだす2人。
その雄姿には傷ついた兵達も奮い起こされる。
「陛下の援護をしろー!!」
「行くぞー!!」
宝剣は閃光のような軌道を描きながら、邪なる者へと向かう。
鋼鉄のような皮膚に、宝剣が一筋の傷を作る。
雄叫びのような咆哮を放つ邪なる者は、全身を真っ赤に染め上げて標的を絞った。
「おいおい、ほんまに国王陛下が出てきたぞぉ……。
こりゃとんでもない借りを作っちまったなぁ、殿下」
圧倒的な国王達の攻撃は、優勢だった邪なる者を徐々に押し返していく。
力なく左腕を垂れるヒューランは浅い呼吸でその雄姿を見た。
「くそ……、俺が無力なせいで……!」
これ以上は、もう黙っていられない、
ヒューランは右手を宝剣の柄にかけた。
だがヒスイがすぐさまそれを阻止する。
「そうやってお前はすぐに『そいつ』に頼ろうとする。
そうウマい話はないんやぞ、……ヒューラン」
「ぐあっ!!」
「っ! ジスト!!」
邪なる者の横殴りの突進に打たれ、ジストは馬ごと吹き飛ばされる。
宝剣が宙を舞い、地面に突き刺さった。
瞬時にコーネルはジストに駆け寄り、邪なる者の次の攻撃からジストを守ろうと剣を振るう。
だが、更に続いた一撃をかわしきれず、コーネルまでもが地面に叩きつけられた。
振り降ろされる禍々しい爪。
――あぁ、ここまでか。
「父上、母上、お許しを!!」
飛び出したアメリが、両親の傍で大地を貫く宝剣を二振り、抜きとる。
宝剣ミストルテインと、宝剣カレイドヴルフ。
双剣は横たわる両親から止めの一撃を退けた。
アメリの一撃により、邪なる者に大きな隙が生み出される。
「さぁ、見とれよ、ヒューラン。
こいつが『力』の代償や!! 肝に銘じろ!!
後始末は任せんぞ!!」
「何を……っ」
ヒスイはヒューランの腰から宝剣を抜き取る。
『宝剣ブランディア』。
その赤黒い刃が、久方ぶりに姿を現した。
「終わりにすんぞ、兄貴ィ!!」
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