「う、うわあ~!! なんだありゃあ!!」

「撃て、撃て、撃て!!
手を止めるな!!」

とめどない砲撃を浴びせられるが、その化け物には傷一つ付かなかった。
あっという間に前線の隊列が乱され、腰を抜かして撤退する兵士までいた。



「ハイネ!
お前は城へ走れ!
宝剣使えるやつ呼んで来い!!」

「それって王様達をここに呼べってこと?!」

「端的に言えばそうなる!!」

「ハイネ、私の馬に乗れ!
父上と母上のところへ行くぞ!!」

アメリに引っ張り上げられ、ハイネは彼女と共に王城まで駆ける。



「王様達をあんな危険なとこに呼べへんよ!」

「大丈夫だ。私がいる。
父上も母上も、まだ欠けてはいけない方だ。
……私だって宝剣を使える!」

「それは……!」

違うよ、とハイネは唇を噛む。
未来を担うのはアメリだ。
誰だって欠けていいわけがない。



全速力で城まで辿り着き、王城の階段を駆けのぼる。
両親がいるという執務室にまっすぐ向かい、ノックもそこそこに扉を開け放つ。

「父上、母上!
王都のすぐ近くまで邪なる者が来ています!!
邪なる者を制す唯一の手段は宝剣です!!
私に宝剣をお貸しいただけませんか?!」

「いきなりご挨拶だな、アメリよ」

すっ、と立ち上がったジストは腰に携える宝剣に手を添える。

「……ハイネといったな。
君の見解では、どうやらあの邪なる者は『私』に迫る危機だと、そういう話だった」

「は、はい……」

「ならば、私が責任をとろう」

「ジスト?!」

思わず腰を浮かせたコーネルが呼び止める。

「馬鹿な事はやめろ!
お前が目当てなら、一層お前は表に立つべきじゃない!」

「……それじゃあ代わりに娘を行かせろと?
私にそんな事はできない。できるわけがない」

「母上!
それはいけません!
そんな事をしたら……っ」

「……わかった。俺も行く」

「ち、父上?!」

コーネルはゆっくりとジストに歩み寄る。
その手にもまた、宝剣が握られている。

「冥土まで付き合ってやるさ。それが『俺達』だ」

「という事だ。まぁ任せたまえ。
アメリ、お前はグランを気にかけてやってくれ。
すっかり怯えていて部屋から出てこないのだ」

「わ、わかり……ました。
ハイネ、君も一緒に私と来てくれ」

「う、うん」

2人の王は揃って執務室を後にする。
その後ろ姿は颯爽としていた。



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