ハイネ達がミストルテイン城についたのは、その日の昼過ぎのことだった。

「げ、姉上!」

「げ、とはご挨拶だな?!」

城門近くの庭で魔法の練習をしていたグランが真っ先に声を上げる。
その傍らにいたのは、ハイネも知っていた顔だった。

「あれ?!
三賢者のグレンさん!!」

ぽかんとした男――そう、グレンである。
グレン・カリュオン・アルカディア。
ハイネの世界では言わずと知れた召喚術の天才であり、緑の国の大貴族出身という一面も持つ男。
時々カイヤの研究室で見かけたことがあるのだった。

「……サンケンジャー?
そいや昔そんな名前の劇かなんかが流行ったな。
若い頃にバイトしたことがある」

「至極どうでもいいぞ、グレン!
なんだ、久しぶりだな。レムリアの代役か?」

「ま、そんなとこよ。お姫様は相変わらず遊び回ってんのな」

「貴様にだけは言われたくないぞ!!」

「違いねぇや、クハハ!」

この男についてはさておき、とアメリは城を指差す。

「早速母上に挨拶に行こうではないか」

「あ、待った!」

ハイネ自らに止められ、一行は立ち尽くす。
そんな彼女はよりにもよってグレンに歩み寄ったのだった。

「グレンさん、えーと……ここでは初めまして?
うち、ハイネっていうんですけど。
後でちょっとお話聞かせてもらってもえぇですか?」

「お?
こりゃまた積極的なお嬢ちゃんだこと」

「おいグレン貴様! ハイネに手を出すでないぞ!!
私の大切な友人なのだ!!
何かしでかしたら奥方に報告するからな!!」

「おー、怖い怖い」

(……グレンさん、奥さんおるんや)

とりあえず一旦、ハイネ達は城へと向かう。



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