ジストを助ける――……
表面としてはアメリの母を救い、ヒューランを死なせない未来のための一手だ。
だがハイネはもう一つの可能性を考えていた。
そう、“アクロ”だ。
この世界の本来の歴史では、ジスト女王はもうすぐ死を迎える。
その死を察知してアクロが現れたのなら、より多くの犠牲を払うことになる。
その犠牲の一人がヒューランだ。
であれば、ジストを“死なせない”ようにハイネが動けば、アクロによる二次災害を防げるのではないだろうか。
しかし、既にアクロはこの世界に到達していると『旅人』は語っていた。
姿は見えないが、もうどこかでこの世界の歴史を歪めているかもしれない。
“違和感を探れ”と旅人はアドバイスしていた。
ハイネが抱いた違和感、それは邪なる者の出現だ。
あの化け物が、やがては未来をめちゃくちゃにしてしまうきっかけになるのではないだろうか。
なら、なんとしてでもあの化け物が碧の国に至る前に、ミストルテインに危機を知らせなければならない。
「まぁ、他に打つ手もなし。
ワイはハイネに乗った。お前らはどうする?」
「俺はもちろん、ハイネに従う」
「ミーはみんなと一緒デス!!」
「ボクはー……なんでもいいや!」
「私も、母上の死と聞いては無視できない」
「……殿下の死はえぇんかい」
それぞれがハイネに賛同した。
よし、とハイネは立ち上がる。
「おおきに、みんな!
んじゃ、一刻も早くミストルテインに行こ!
今晩は徹夜コースや!!」
「アァ~……ミーは眠たいデス……」
目をこする妹を抱えて馬に跨るヒューランは、再びヒスイに担ぎ上げられる手前のハイネに微笑みかけた。
「……ハイネ。お前は俺の命の恩人だな」
「安心するのはまだ早いで!
ほら、行くよ!」
再び夜の砂漠を駆ける蹄。
夜明けの兆しが見えてきた頃、ようやく赤の国を抜けたのだった。
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