ヴィオルの宝剣を、甥とはいえあっさりと盗み出せるものなのか。
囚われのアガーテが語ったヒスイの過去は本物なのか。
そもそも何故、メノウが担うはずだったヒューランの世話係をヒスイが奪ったのか。
ハイネは一足先にベッドへ横たわり、知る範囲での“違和感”を頭の中に並べる。
アガーテを人質にされヴィオルに従わざるを得ないメノウ。
だがその心までもは服従させられていないのではないだろうか。
でなければ、主と敵対するティルバの娘であるイザナに、優しいと称するような行動をとるはずがない。
ヒューランを確実に死なせず、ヴィオルを討つには。
――“この世界でも”、メノウが鍵を握っているのではなかろうか。
彼はアガーテを心から想っている。そんな事はハイネがよく知っている。
もしアガーテの安全を保障できたのなら、メノウは“主”を討つかもしれない。
だが、ヒスイも同じ事を目論んでハイネをアガーテのもとへ送り込んだ。
その思惑が読めない。
(うちがおかんと会った時、おとんとも会った。
それをヒスイ兄ちゃんに言ったら、エラい食いついて……)
その後のヒスイは何かずっと考えているようだった。
ひょっとして、彼の“計画”にないイレギュラーが起きたのではないだろうか。
そう、『ハイネとメノウが出くわした事』だ。
アガーテに希望を吹き込んだ誰か、という存在がメノウに知られるとまずい、という事情があるように思える。
(うう、頭痛ぁなってきた)
なんとなく懐中時計を覗き込めば、もう夜も更けてきた頃だ。
絡まりそうな頭を休めるため、ハイネは目を閉じる。
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