ダークエルフの里。
暗がりの中、せかせかと動き回るダークエルフ達と、数人の人間。
ダークエルフは本来、日の出と共に活動を始め、日の入りと共に眠りにつく。
今現在、時刻にして日が落ちて数刻といったところだが、ダークエルフにとっては“夜更かし”である。
この暗がりで何をしているのかと言えば、里に届いた多くの物資を保管庫に積み上げているところだった。
ダークエルフの里は照明に乏しい。日が落ちれば真っ暗闇だ。
その暗闇で隠れるように、ジストから届いた物資の数々を整理しているのだ。
「いや、すげぇな。これマジでミストルテインからの支援なのか」
「そろそろヒューラン王子もお戻りになられるらしい。
俺達の戦いはまだ終わっちゃいないんだ」
「お前達、闘志を燃やすのもいいが荷運びを手伝え」
族長のピシャリとした物言いに、人間側は委縮する。
「しかしターフェイさん。よくもまあ俺達に協力してくれる気になりましたね。
そりゃもちろん助かってますけど」
「我々は人間の諍いに興味はない。ただ、ティルバの死を嗤う連中が許せないのだ。
だから戦う」
ダークエルフの女族長――ターフェイは無表情でそう告げる。
「無駄話はよかろう。私は休む。
お前達はくれぐれも下手を打つな。黙って決戦の日を待て」
「……誰がリーダーだかわからなくなるな、こりゃ」
荷運びを終えた面々は、それぞれのねぐらへと戻る。
その様子をじっと見つめる、灰の瞳。
彼の目は暗闇をも見通す。
(……ダークエルフが加担している)
(赤の国の分裂、――戦火、――ミストルテイン)
(――ジストの、死)
見えない道筋を組み立てたその人物は、霧のように姿を消した。
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