パンッ!!
「うわぁー!!」
外からシエテの声がする。直前に聞こえたのは銃声だろうか。
驚いて窓から身を乗り出し下を見ると、目を回して倒れている彼がいる。
「シエテ?!」
ハイネは反射的に窓から外へ足を伸ばす。
「危ない」と忠告するアガーテの声も聞き流し、細い縁につま先で体重を乗せ、シエテの元へと至る。
彼は眉間に銃創を作っていた。
常人なら目を回しているだけで済むような傷ではない。
「ちょっと、シエテ!
大丈夫?!
いや全然大丈夫に見えへんのやけど!
うちの声、聞こえる?!」
彼の肩を揺さぶっていると、不意にカチリ、と固いものが後頭部に当たった。
冷たい鉄のような感触。
――振り返ったら死だ。
ハイネはゆるゆると両手を挙げる。
浅い呼吸を繰り返し、必死に酸素を求める。
「――コソ泥が。この屋敷で何を探しとる?」
その声を聞いて、ハイネは息が止まった。
“聞き慣れた、聞いた事のない声”。
相手を威圧し、必要とあらばすぐに引き金をひける無慈悲な低い声音。
「ど、ドロボーとか! そういうんじゃ……ないです」
「じゃあここに何の用や?
その“人形”は手前の連れか?」
「え、と……」
「上から来たな?
“あいつ”に何をした?」
「何も……っ!!」
「あぁ、もういい。話にならん。
――死ね、クソガキ」
指が引き金に触れる音がする。
(あかん、死ぬ!!)
「やめて、メノウ!
その子は悪い子じゃないわ!」
上からアガーテが叫んだ。
少し間をおいて、後頭部に突きつけられていた物がゆっくりと離れていく。
恐る恐る振り返ると……――
予想通り、この世界の“父”がいた。
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