彼女に手招かれ、器用に壁をよじ登るシエテに背負われながら2階に至る。
窓から顔を出している女性は、その様子をクスクスと笑いながら見ていた。

「可愛らしい泥棒さん達ね。
でも、ここには面白いものはないわよ」

「ど、泥棒とちゃいますぅ!」

「あら……。あなた、ひょっとしてオアシスの出身?
訛りがあそこと同じだわ」

「ま、まぁ……」

すっかり委縮してしまったハイネを窓の縁に送り届けると、シエテは身を引く。

「ボク、下で見張ってるから。
大事な話、あるんでしょ?」

「えっ、でも」

「何かあったらすぐ呼んでね!」

有無を言わさず壁をスルスルと伝い下りて、シエテは草陰に姿を消した。



「あなた、私に会いに来たの?」

「そ、そんなとこで……」

「私、アガーテっていうの。あなたは?」

「……ハイネ・リプカ……――アードリガーです」

目の前の碧眼が丸くなった。

「やだ……ヒスイの隠し子?!」

「ちゃいます!!」

「え、じゃあまさか……」

「た、たぶんそれもちゃいます!!」

何か事情がありそうだ――……
そう察したのか、アガーテはハイネに部屋の中へ入るよう促した。




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