一晩かけてヒューランが描き上げた地図。
彼の几帳面な性格が出ているのか、寸分の狂いもなく記されている。
「ワーオ、お兄とっても上手ネ!
これでミーもブランディア帰れるデスか?」
「上手くいけば、だがな……」
「ミーはもう白の国はゴメンなのデス!」
むう、と頬を膨らませるイザナは猛抗議だ。
「イザナ、そんなにイヤなとこだったの?
ボクがそのキョーコー?とかいう人コロしてあげよっか?」
「アホ! お前頼むからルベラの前で刃物出すんやないぞ!!
どんだけムカついてもな!!」
「えー? なんでさー?
邪魔ならコロしちゃえばいいじゃん」
「そっ、そんな事をしたらこの世界はたちまち修羅だぞぅ?! このイカレ殺人鬼め!」
この倫理観に欠ける少年は一体どんな育ち方をしてきたのだろう。
誰となく尋ねると、シエテは椅子の上で胡坐をかいた。
「ボク、『ホムンクルス』っていうんだって。
カラッポの人形に、お父さんとお母さんの力を混ぜて作ったって聞いたよ。
あとはよくわかんない。
お母さんもホムンクルスだったみたいだけど、会った事はないんだぁ。
お母さんはクラインが作ったホムンクルスで、だからボクにとってクラインは『じいちゃん』なの」
ハイネの世界で『ホムンクルス』といえば、多大な魔力を生成する存在として知られる。
だが決して簡単に量産できるものではない。
「シエテの他にも、おるん?
そのホムンクルスって」
「いっぱいいるよ!
でも、ボクだけなんかヘンなんだって。
他の子は皆、クラインの言う事ならなんでも聞くんだ。
ボクは楽しい事しかしたくないから、じいちゃんの話は半分くらい聞いてない!」
少しクラインが哀れになった。
ひたすらに娯楽を求めるところは、どこか『悪魔』に似ているかもしれない。
「さっきのカードゲーム、すっごい楽しかった!
イザナが教えてくれたんだ!」
「せっかくミーが教えたですケド、シエテが強すぎて、ミー勝てなくなっちゃいましタ……」
「だってイザナってすぐ顔に出るんだもん!」
仲が良さそうなのは何よりだが、ハイネは別の場所に引っかかりを覚える。
この世界ではホムンクルスが大量に作られているという。
その技術があれば、邪なる者を造る必要はないのではなかろうか。
(――ひょっとして、この世界も『淘汰』しようと……?)
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