隣の部屋では、うんうんと唸る声が響いていた。
ハイネがカイヤとの通信を終えて戻ってみれば、仲間達が腕を組んで沈黙している。
――最も、シエテとイザナは小難しい話に耳を貸さず、二人でトランプ遊びをしているのだが。
「……どしたん、皆?」
「おー、ハイネ。報告終わったんか」
うん、と頷いて腰を下ろすと、ヒスイはわしわしと頭を掻く。
「ほら、ルベラんとこ行くやろ?
しかしあの教皇が何の見返りもなしにイザナをこっちへ寄越してくれるたぁ思えんくてな。
ワイはもうこのまますっぽかして逃げたらええんちゃうか思うんやけど、ヒューランがアカンて」
「当たり前だろう。形はどうであれ、一定期間イザナを匿ってもらったんだ。
なのに、攫われた事を良いように使って連れ戻して無断で去るなど失礼だろう。
俺とて出来るならこのままブランディアへ向かいたいが、もしもルベラ殿の逆鱗に触れるような事があれば、それこそブランディア壊滅だ。武力で白の国に勝てるわけがない」
「それで、イザナの代わりに何を渡せばルベラ殿の機嫌を損ねないかと審議していたところなのだが……私達にはサッパリだ!」
潔く天を仰いだアメリ。
教皇を名乗るほどの男が欲しがる物――……
「……地図?」
ハイネの呟きに、3人が反応する。
「……そうか! 君の世界地図!!
それを複写して売りつけるのはどうだね?!」
「なるほど……。有り、かもしれない」
実際には前の世界の地図だが、少し手を加えればこの世界でも十分通用するものだ。
すぐにハイネは地図を広げ、ヒューランが紙とインクを手にする。
まさかこんな形で役に立つ事になろうとは。
この場にアキがいたらどんな顔をしただろう。
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