シエテと名乗ったあの少年。
その口ぶりは明らかにハイネを狙ったものであったが、もちろんハイネには彼との面識はない。

「恐らくあいつが犯人と見ていいだろう。
オトモダチとやらも、もしかしたら攫われた人達のことかもしれない。
……捕縛すべきだったか」

宿に戻った一行は、突然の来訪者に困惑気味であった。
少年を斬りつけたはずの刃を見つめて、ヒューランはため息を一つ漏らす。

「しかし……ハイネ。まさかとは思うが、自分自身を囮にしたのではないだろうな」

「へ?!」

改めて説明せずとも、仲間達は“お察し”の顔でハイネを見つめる。

「おいおいハイネぇ……。お前ちょっと前からおかしくないか?
なんで何も言わんで、んな危ないことすんねん」

「そうだぞ!
もうこの際洗いざらい白状したまえよ!!
我々は何があろうと君を嫌ったりなどしないぞ?!」

「……というわけだが、どうだ?
俺も一応、お前の素性はできるだけ知っておきたいのだが。
ダインスレフに用事があるというのも尋常ではない。
お前――ただの町娘というわけではないんだろう?」

自分では一般人のつもりであったが、周りからはそうは見えていないことが明らかだ。
3人に詰め寄られ、このまま隠し通してもお互いに居心地が悪いだけだと悟る。

「全部話すと長くなるんやけど……いいかな。
あと、大真面目に話すから、信じてとまでは言わんけど笑ったりはしないでな」

全員が頷いたのを見届け、ハイネは1つずつ語り始めた。

自分は異世界から来たこと。
この世界は二番目で、前の世界の仲間と辛い別れをしたこと。
ダインスレフに行けば、恩師の助けになる情報が得られるかもしれないこと。
次の世界へ渡る方法を探していること。

そして、
ヒスイの兄メノウの娘であることも。




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