ぎこちなく後ろを振り返ると、長身の後ろ姿があった。
少年のナイフを弾いた剣が小さく火花を散らす。

「ヒューラン……?」

返事なく、彼は少年に斬りかかる。
わあ!と叫んだ少年は身軽に宙返りをしつつ後退した。

「危ないじゃんよー!!
ケガしたらどーすんのさ!!」

じゃあお前がその手に握っているものはなんだ、と攻め立てたくなるが、ヒューランは構わず素早い一撃を叩き込む。
手ごたえを感じた。

――しかし、少年の肌に刻まれた傷は血を流さない。

確かにそこには切り傷が刻まれているのに、だ。

「お前は一体……――」

「あっ、そうだった、自己紹介しなきゃだネ!
ボクは“シエテ”だよ!
うわあ、誰かに名乗ったの初めて! うれしいっ!!」

「聞きたいのはそういう話ではない。
お前は何者だ?
ハイネを狙ったのは何故だ?」

「ボクは――」

シエテが口を開きかけ、そのままやめた。
向こうから足音が近づいてきたからだ。

「キミ、そうそう赤い髪のキミ!
ハイネっていうんだねぇ!! ボク覚えたよ!!
ホントは連れてってあげたかったけど、ちょっと見られすぎちゃったかなぁ」

「ヒューラン! ハイネ! 無事かー?!」

「こんな街中で何しとんねんお前ら!!」

大声で駆け寄ってくるヒスイとアメリの方を一瞥し、シエテはナイフをしまい込んだ。

「ねぇ、よかったら遊びにきてよ。えーっと、ダインスレフっていうんだっけ?
“オトモダチ”がいっぱいいて楽しいよ!
……じゃね!」

シュッ、と素早く屋根に飛び乗った彼は、そのまま暗闇の中に消えていった。




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