小走りで馬車に近づくと、アメリが身軽に降りてきた。

「やぁやぁ、愛しの君! 数日ぶりだ!」

「アメリ! おはよう、どっか行くん?」

「あぁ。今からミストルテイン城に戻るのだ。客人を連れて、な!」

そう言って彼女が顎をクイと後ろに向けると、馬車から男二人――と、パーティーで見かけた少年が顔を覗かせていた。

「おう、ハイネやないか。ぎょーさん荷物抱えて、出発か?」

ヒスイとヒューラン、そして第一王子のグランだ。

「うん!
うちもさ、ミストルテイン城に行きたくて。
アメリはレムリアって人、知っとる?」

「なんと!
もちろん、レムリアは私の魔法の師匠だ。よく知っているとも。
君が彼に用事など、驚いたな」

「へへ。田舎娘のうちなんかに会ってくれるかわからんけどね」

肩をすくめるハイネを、ふむ、と顎に指を添えて眺めるアメリ。
そうしてから、ぽん、と手を打った。

「それならば、私の馬車についでに乗っていかないか?
レムリアにも話を通してやろうではないか」

「ほ、ほんま?! スッゴイ助かる!!」

「もちろんだとも!
ほら、いいだろう、皆!!」

「あ、姉上!!
そんな素性のしれない者を同乗させるなど――」

「俺は、構わない、むしろ、」

「嬉しいってか? がはは!! 殿下も言うようになったなぁ!!」

ボッ、と真っ赤な顔をするヒューランを見てヒスイが笑い転げた。
ぱちぱちと瞬きを繰り返すアメリとハイネは、顔を見合わせてお互いに首を傾げる。

「まぁ、あの大男が何を笑っているかはどうでもいい。
グランのことも気にするな。
さぁ、乗りたまえ!! “旅は道連れ”だぞ!!」

「なっ?!
ちょ、姉上?!」

グランの抗議に耳を塞ぎ、ハイネはアメリに引っ張り上げられてミストルテイン行きの馬車に乗り込んだ。



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