朝食を綺麗に平らげてから、忙しなく荷物をまとめる。
マオリから譲り受けたお下がりの革の鞄に私物を詰め込み、肩から下げる。

「それじゃあ、お世話になりました!!!」

ハイネが元気に別れを告げると、マオリは抱きかかえた赤子のアキの小さな手を振って微笑んだ。

「アンリもよろしく、と。
んもう、あの人さっさと出勤なさって。照れ隠しが下手なんですから!
またいつでもいらして。ここは貴女の家だと思ってくれてもいいんですのよ」

「あ、あの」

マオリの足元からトキが顔を覗かせた。
膨らんだ皮の袋を差し出し、俯く。

「お、お弁当、です。ハイネさん、いっぱい食べるから、おにぎりをたくさん詰めました。
よ、よかったら食べてください!」

「うわぁ、嬉しい!!
おおきに、トキちゃん!!
味わって食べるね!!」

顔を上げたトキは、ぽっと頬を染めて笑う。

「さみしくなるけど……楽しかったです。
気を付けてくださいね」

いってらっしゃい、と母娘に見送られ、ハイネは元気よく手を振り返して街道に駆け出した。





街の東の広場を抜けた先に馬屋がある。
小銭を出して1頭借りようと店番に近づくと、聞き覚えのある声がハイネを呼び止めた。

「お~い、ハイネ~!!!」

振り向くと、馬車の中からアメリが身を乗り出していた。



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