カレイドヴルフの街並みは、ハイネがよく知るものよりいくらか輝きを増していた。
王城近くの広場にある噴水に、青と緑の国の合併を記念した銅像が建てられ、水しぶきを煌めかせている。
手を取り合う男女の銅像――もしかしたら、モチーフはコーネルとジストなのかもしれない。
「お城に行くって……王様に会うの?」
学校へ向かう道中でハイネが問うと、ヒスイはわざとらしく腕を組んで空を仰ぐ。
「まぁ~ほら、社会勉強やて。ヒューランは世間知らずの坊ちゃまやさかい。なぁ?」
「あ、あぁ……」
しきりに目配せしながら、二人の男はハイネの疑問の答えを探しているようである。
曲がりなりにも学者のタマゴであるハイネだ。彼らの隠しきれていない顔を見ていれば、高貴な身分を伏せていることくらいは容易く想像つく。
とはいえ、そんなことよりも、ハイネにとってはヒスイの外見の既視感が気になっていた。
炎のような色の髪は、自分達と近しい血筋だと本能が察している。
もしかしたら父親の別人格だろうか?
(……でもおとんはもうちょっとクールだし)
どちらかというとユーファに似ている……かもしれない。
「なんやお前。さっきからワイの顔をジロジロ見て。男前に惚れたか? ん?」
「そらないわ」
「えぇっ、酷いわあ」
雑談を交わしながら大通りを行った先に、見慣れた懐かしい建物が現れた。
その姿を認めると、ほっと胸を撫で下ろす。
「んじゃ、ワイらは城へ向かう。妙な縁やったがおもろいもんやな。気ィつけぇや」
「うん、おおきに!
ヒューランもありがとね!」
元気よく手を振ってハイネは学校の門をくぐっていく。
後姿を見送る二人。
珍しくヒューランがぼそりと呟く。
「……お前に隠し子でもいたのかと思った」
「おいおい、いくらなんでも信用なさすぎとちゃうか。
……ワイの方がビビったわ。アガーテ様の生き写しやん、あの顔……」
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