青の国はなくなった――……
正確には、青の国と緑の国が合併し、『碧の国』という新しい国が生まれたのだという。
ハイネの世界でも青の国と緑の国の長年の同盟関係はよく知られた話ではあったが、この世界ではなんと二国の王族が政略結婚を経て、国王が二人君臨する連合国となったらしい。
妃に下る事を嫌がった緑の国の女王ジストが、コーネルとの共同統治者としての立場を条件に実現した歴史的出来事だ。
「とはいえ、実際はあんまり変わらんけどな。二国の間の関税がなくなったとか、許可証なしに往来できるようになったとか、強いて言えばそんなもんやて。
……それにしても、嬢ちゃん、ヒューランより年下に見えるが……よお青の国なんて知っとったな?」
「あぁ、うん、うち学生やから……。あ~頭いたぁっ!
やっぱりうち、どっか打ったのかも。記憶が所々ないみたい」
すぐにバレる嘘だと思ったが、意外にも目の前の男二人はハイネの言葉を信じたようだ。
その方が都合がいい。まだ素性の知れないこの男達に『別の世界から来た』と告白するわけにはいかない。
前の世界で、軽率な発言で仲間共々大変な目に合ったのだから。
「なぁ、その碧の国?ってやつには、魔法学校ってある?
うち、どうしてもそこに行きたくて」
「国立魔法学校か?
カレイドヴルフ城の近くにそんなんがあったな?」
同意を求めるようにヒスイがヒューランに目をやる。
ヒューランはコクリと頷いた。
「俺達はカレイドヴルフ城を目指している。
……近くまで送るか?」
「助かる~!! お願いしてもいい、ヒューラン?」
名を呼ばれ慣れていないのか、ヒューランは少し照れたように目を逸らす。
さもからかいたげに、ヒスイは彼を肘で小突いたのだった。
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