速足で廊下を行き、人気のない非常口までやってくる。
フェナが持っていた鍵で錠を外し、そっと外の様子を伺った。
「ん、誰もいない。
どうぞ、バイバイ」
「あ、ちょ、ちょっと待ってフェナちゃん!」
小首を傾げるフェナに、視線を合わせるようにハイネは屈む。
「フェナちゃん、約束覚えててくれておおきに!
元気になれてほんまよかった。レムリアさんと仲良くな!」
「やくそく……?」
フェナはしばらく考えるように視線を泳がせた後、急にピタリと視線を合わせてきた。
「ハイネ」
「うん! そうだよ!」
「やっと会えた」
色白な肌に添えられた唇がゆっくりと弧を描いた。
「ハイネは、いい子。フェナのともだち。知らないなんて言ってごめんなさい。
あなたと一緒の夢、とっても楽しかった」
小さな手が、ハイネの赤い髪をぽんぽんと撫でる。
「空も、海も、ちゃんと見た。パパが見せてくれた。
だから、もうフェナはだいじょうぶ」
いってらっしゃい、と少女は笑った。
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