いつの間に眠りこけていたのだろう。
トントンと肩を叩かれ、ハイネははっとした。
「わ、ごめんなさ……つい……」
「いえいえ、いいのですよ。お疲れだったのでしょうし。
はいこれ、貴女にプレゼントですよ」
レムリアが差し出したのは水晶のような丸い球だった。
ハイネの手のひらに収まるほどのものである。
「これは……?」
「そこに100人分の魔力が入っています」
慌てて両手で持ち変えた。レムリアはクスクスと笑っている。
「貴女の懐中時計に、ここの座標を埋め込みました。
酷ですが、出発するなら早い方がいい。
……不穏な気配がしますので」
「不穏?」
「ダインスレフを、アルマツィアの兵の覆面が嗅ぎ回っているのです。
恐らくは貴女方を探している。
一般人にしては、例の戦争に少々関わりすぎてしまっているようですから」
眠りこける仲間達の面々に目をやり、彼はそう忠告した。
「……ありがとう、レムリアさん。
うち、気張って行ってくるわ」
「その意気ですよ。
……機関の表側はキナ臭いですから、裏口から出発なさい。
私は時間を稼ぎます。フェナに案内してもらってください」
一瞬、嫌な予感がする。
思わずレムリアの腕を掴んだ。
「そんな事言うて、クレイズ先生みたいに死んじゃったらイヤや!
お願い、レムリアさん、死なないって約束して!」
「大丈夫ですよ。約束します。
私は昔と違って、人一倍生きる事にガメつい男ですから、頼まれなくても死にません」
「……約束やからね。
死んでもうたら、うちからのありがたい報告が聞けへんくなるんやから」
「それは由々しき事態です! ……えぇ、必ず」
ハイネは急いでユーファ達を叩き起こす。
眠い目をこするフェナが、のんびりと欠伸をしつつ扉を開けた。
「裏口はこっち。迷子にならないように、ちゃんとフェナについてくるんだょ」
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