機関の裏口から出ると、少し先に馬車が止まっていた。
操縦席に座る男性が手を挙げる。

――屈強な巨漢だ。



あまりの強面と大柄な体格に、条件反射でユーファが剣の柄を握る。
だが、それを止めたのは何故かトキとアキだった。

「な、なんや?!
あのオッサン絶対アカンやつやろ!!」

「お、落ち着いてくださいユーファさん!
あの人は私達の知り合いです」

「知り合い?!」

「ウバロおじさーん!!」

アキが駆けていく。
巨漢が小さな体を抱き上げようとしたが、サッとかわされた。

「だめだめ、骨折しちゃうから、ぼく!」

「アキ、大きくなったなあ。しかしその謂れは酷過ぎやしないか」

「ウバロさん、お元気そうで。トキです。シュタインの」

「おお、トキか。別嬪になったじゃないか」

律儀に挨拶をするトキとはしゃいでいるアキを交互に見て、ハイネ達は目を白黒させる。



「俺はウバロ・ブラーゼン。まぁ、なんだ、麓の集落の縁でな、トキやアキとは知り合いだ。
今は機関務めで、所長から早馬を用意するように言われていて、こうして馳せ参じた。
うっかり途中で手綱で締め上げたせいで馬の機嫌を損ねたもんで、少し到着が遅れてしまったが。
さぁさぁ、乗ってくれ。魔境まで飛ばすぞ。馬が死なない程度にだが」

「ウバロおじさんはスッゴイ怪力なんだよ。怪獣みたいなんだ!
姉ちゃんがやたら強いのは、ウバロおじさんが師匠だったからなんだよ」

「はい。久しぶりの再会ですから肉体言語で語り合いたいのですが……
今は急ぎますから」

本当に大丈夫か?と眉をひそめるユーファだが、トキに勧められたのでは断る理由もない。
ハイネ達はいそいそと馬車に乗り込み、ウバロは手綱を握った。

「行くぞ!」

「その……ウバロと言ったか。
馬を駆る時は、もう少し手綱を緩めてだな……」

「もうアトリさんが操縦した方がいいんじゃないかとベティは思うのです」

まだ明けきらない夜の道を、隠れるように進んでいく。
――ちょうどその頃、機関を包囲していたアルマツィアの兵が、施設に乗り込む準備をしていた。



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