『えっ、“ゲート”ですか?』

「うん。カイヤ先生、何か知っとるかなあって」

レムリアから聞いた話をカイヤに説明してみると、ははぁ、と感心した声が運ばれてきた。

『スゴいですね、そっちのレムリアさん。アンリ先生より向こう見ずです』

カイヤの後ろで、微かに咳払いが聞こえた。

『やっぱり、ゲート……ですよねぇ。
いえね、私も知ってますよ。えぇ、それはもう、忘れられないニガ~い思い出です。
あんなの、死なないって言われたって飛び込みたくないですよ。私も“3度目”はイヤです』

「カイヤ先生、やっぱりゲート通った事あるんや?!」

『ありますよ。行って、帰ってきた、その2度きりですが。
どちらでも死ななかったですし、そちらのレムリアさんも過去に1度無事だったというのなら、ゲートによって死ぬ可能性はそこまで高くないとは……思います。
保証はできませんよ、もちろん』

「なら……うちでも大丈夫かな……」

『何なら道連れにしたらどうですか。そこのレムリアさんを』

吐き捨てるようなカイヤの台詞に、レムリアは頭を掻く。

「私、そちらの世界でどれだけの嫌われようなんでしょうかね……」

『えぇ、それはもう。全世界から排除したい程度には』

「これは酷い」



当事者であるカイヤの話から少し自信がついたのか、ハイネはようやく踏ん切りをつけたのだった。

「よし、こうなったらやったるわ!!
レムリアさん、うちがゲートの先を見てきたる!!」

「さすが、“旅人”さんは違いますね」

ニコニコと笑うレムリア。
しかし何かが引っ掛かった。

「タビビト……? どこかで……」

「さて、そうと決まれば、ハイネさんにゲートの先から私へ連絡する手段を身に付けてもらわなければ」

ハイネの違和感に気付かなかったかのように、レムリアは話を進める。
彼が自分の机の向こうから引っ張り出したのは――“世界線観測器”だ。

「あれ?!
それ、青の国にあったやつ……」

「そう、それと同じ物です。
クレイの遺品として、クライン君から送られてきました。
守り抜く自信がないから、機関で安置するようにと」

クレイズと共に一生懸命直した『カイヤの遺品』。
無愛想な青年の真摯な横顔が、ふと蘇って涙腺を突く。

「貴女が持つ懐中時計と、この世界線観測器をしっかり繋げておきましょう。
ここの座標を懐中時計に埋め込んでおけば、今し方貴女が恩師の彼女と通信できたように、こちらとも遠距離でやりとりができる。
さぁ、盛り上がってきましたね! 早速私は少しこの機械を弄らせてもらいますよ!」

レムリアの学者気質が上機嫌になったところで、ハイネは戸惑いつつも彼の作業に手を貸す事になる。




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