世界の中心。
『魔境』と呼ばれる領域に、『ゲート』という奈落が存在する。
ゲートはこの世界と別の世界を繋ぐ唯一の通路ではあるのだが、まだそれを証明する材料が揃っていないのだ。
「ハイネさんが別の世界へ渡るなら、まずそのゲートを目指す必要があります。
貴女の体を転移させるだけの魔力を携えて、その奈落へ身を投げる必要があるのです」
ハイネはヒュッと青ざめた。
後ろの控える一行も、ざわつく。
「そんな事したらハイネさん死んじゃいますよ~!
どこかの世界に着けるという保証もないのですよね?!」
思わずベティが嘆くが、レムリアはニコニコと笑ったまま。
「で、でも。うちがこの世界に来た時は、ゲートなんか通らないでピョンって飛んできたよ?!
なんかこう、それと同じような方法は……」
「残念ながらこの世界には存在しないですね」
うう、とハイネは押し黙る。
「ハイネさんがこちらの世界へ来た時の状況、ざっと聞いただけなので私にも確信は持てませんが……
恐らくはゲートと同じ役割を持つ小さな歪みが作られ、そこに貴女が吸いこまれてしまったのでしょう。
事故とはいえ、ヒトが成し得る技術でそこまでの可能性が見い出せたのは、とても興味深い。
私達の世界は『世界』という言葉より更に広がるかもしれないということ。
もしもそんな技術が普及したのなら、世界と世界の貿易や、文化の交流もあり得るかもしれない。
とても夢のある話ですが、今はまだヒトの手に余る技術だとも言えるでしょうね」
淡々と説明しているが、レムリアの目が輝いている……ような気がする。
純粋に学者としてとても興味があるのかもしれないが。
「さて、ここからが本題です。
実は私、件のゲートの研究もかじっている者でして。
ハイネさんがゲートを通るなら、その先の結果をどうにかして私に報告してほしいのです」
「……なんや、学者先生。ハイネに“死ね”言うとるんか……?」
ユーファの苦々しい顔に、レムリアは苦笑する。
「悪く言えばそうとも言えるのかもしれませんね。
でもね、“死なない”確信はちゃんとあるんですよ」
「そんなもん、一体どこに……」
「“私が”、過去に一度、ゲートに身を投げた事があるのです」
しん、と静まり返る。
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