ついに世界最強の堅牢、聖都アルマツィアにカレイドヴルフ軍が進軍してきた――……



「道を開け!!」

「妨げる者は覚悟しろ!!」

聖都の民は悲鳴を上げながら逃げ惑う。
とはいえ、逃げれば追われないと気付いた民達は、建物の中に隠れて状況を見守る。
石畳に数多の蹄の音が響いた。嵐のように走り去り、宮殿へと向かう。





「イオラ様!
奴ら、この宮殿に押しかけてくるつもりです!
貴方様だけでもお逃げください!!」

「いや、その必要はない」

焦る聖都の騎士とは裏腹に、イオラは玉座で悠然と構えている。

「で、ですが、このままでは宮殿が落とされるのも時間の問題……――」

「カレイドヴルフ軍を率いているのは誰だ?」

「はっ、恐らくは国王コーネルと、幽閉されていたリシア妃かと……」

その報告を聞いたイオラは、肩を震わす。
ぎょっとした騎士が身構えるが――

「はっはっはっは!!! 馬鹿な青二才共め、愚か者よ!!!」

イオラは全身で笑っていた。
普段、ほとんど感情を示さない教皇のそんな姿に、騎士は真っ青になる。

「くっくっく……! いや、失敬。笑いすぎたな。
あまりにも枠に嵌りすぎて、私の方が驚くくらいだ。
……さぁ、“終結”といこうではないか」

「と、申しますと?」

イオラはゆっくり立ち上がり、静かに右手をかざした。

「――殺せ。青の国の王も、愚弟の残滓であるあの女も。
我がアルマツィアは不落の聖地。荒らす蛮族共は死を以て贖罪を」

「……御意」

“歴史”が動く……――

蝶が舞って嵐を呼ぶように。



-118-


≪Back | Next≫


[Top]




Copyright (C) Hikaze All Rights Reserved