白の国と青の国の戦争の状況が一変した――……
その噂は緑の国にも届いていた。
同時に、酷い“胸騒ぎ”に襲われる者がいた。
「『国王自らが率いる軍は、士気も最高潮に。カレイドヴルフ軍は勝利を確信している』……?!
何を、何を馬鹿な事を、コーネルのやつ……ッ!!」
ジストは怒りや焦り、もどかしさを爆発させる術を探して震えていた。
持っていた新聞をグシャリと握り潰し、思わず床に叩きつける。
「誰だ、コーネルを唆した連中はッ!!
国王を戦線に引きずり出すなど、よもや白の国の根回しではあるまいかッ?!」
「まぁ落ち着け、て。ジスト。
まだ決まったわけやない」
「これが落ち着いていられるか?!
戦場真っ只中に! 兵器が飛び交う死地に!! わざわざ!! ノコノコと主君が出てきてどうする?!
そこで首を取られたりしたら、すべてが終わりだ!!」
「だから、まだ決まってへんやろ。
ほんまにあいつが姉さん連れて帰ってくるかもしれん。
いずれにせよ、我々は静観するしかない」
「こんな状況で、見ているだけだなど……」
「ここでうちが手出しして、巻き込まれてもうたら何の意味もない。やってる事が青の国と同じになる。
現に、既に我々はアトリの軍の一小隊を壊滅させとる。これ以上はあかん。
ジスト……、辛抱しろ。お前があいつを心配しとるのはようわかっとるつもりや。
だがな、ワイもお前も、“緑の国”を治める立場や。
せめて我々は、安寧を考えた統治をしようや」
ジストは黙って座り込む。
ぐしゃぐしゃに皺が寄った新聞を拾い上げ、彼女は溜息を吐いた。
せめて親友が無事に過ごせるように、思いを馳せながら。
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