抱き起こすと、傷だらけのアトリは力なく首を揺らした。
「おい、冗談よせ、起きろアトリ!!
お前こんなとこで何しとんのや?!」
「ゆ、ユーファさん、ちょっと待ってくださいです。今ベティが傷を治します!」
小さな手をアトリの胸元にかざすと、すぐに咳込み、紫の瞳がゆっくりと開いた。
「アトリ!!」
「え……なぜここに、お前が……」
「馬鹿野郎、こっちの台詞だボケ!!
おい、トキとアキの親を知らんか?!
あの大きい家に住んどる夫婦や!!」
「あ……ッ、あぁ、あの2人、は、私が、私が……――」
「ユーファさん、アトリさんはまだ意識があやふやみたいです。
一旦火から逃れましょう。父と母はきっと……、いえ、大丈夫ですから」
「トキ……」
何かを悟ったような顔つきのトキがそう促す。
まだよくわかっていないアキも、姉の面持ちから何かを感じたのかもしれない。
「あの池の方に……すべてはそこに……」
アトリがか細く告げる。
村はずれの大きな池の事を言っているのだろうか。
5人はアトリをそこへ連れ出す事にした。
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