慌てて荷物をまとめて洞穴を飛び出し、全速力で南西へと向かう。
風上へ向かうにつれて強まっていく不穏な煙臭さ。
やがて、暗がりの雪原の向こうに、赤く燃え盛るものを見た。

「う、うそ、集落が……ッ!!」

アキは腰を抜かし、トキは固まる。
ハイネは目を見開いた。

――畑が、家が、学校が、燃えている。



「ど、どういうこと?!
とっ、父さんと母さんは……?!」

「アキ坊、立てるか?!
親父さんとお袋さんを助けられるか?!」

「い、行く!! 行くよ、ぼく!!
姉ちゃんッ!!」

「あ……う、はい、行きます、もちろん!!」

「ハイネ、悪いが黒の国に行く前にこっちや!!」

「当たり前や!! うちも行くで!!」

「ベティももちろん行きますですよ。『癒し手』にお任せあれです!!」

5人は集落に向かって走る。
降り積もった雪と裏腹に、炎の熱気が襲いくる。





集落の入り口まできたところで、ユーファは仰天した。

「な?!
お前、“うちの”兵か?!」

倒れ込んでいた兵士の数人が、緑の国の紋章が刻まれた鎧を着ていたのだ。
煙と熱気を吸って喉をやられたのか、かすれた声で彼らは必死に村の方を指差す。

「あ、アトリ様が、アトリ様がお一人で、村の中へ……! げほっげほっ」

「は?! ここにアトリが来とるんか?! 聞いとらんぞ?!」

「面目ない……護衛の我々がこの有様ゆえ……。
アトリ様が集落の住人達を救いに行ったきり……」

「アルマツィア兵が……村を、襲ったのです。
なんでも、オリゾンテがどうのこうの……」

「オリゾンテ……?!」

トキとアキが肩を跳ねる。

「ま、まさか、“母さん”を狙って?!」

「えぇい、状況整理は後でだ!!
お前ら、火傷に気をつけろや?! 行くぞ!!」

その辺りに積もった雪を肌に塗りつけ濡らしたところで、5人は燃え盛る村へと足を踏み入れる。




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