雪国であるこの一帯は夜が長い。
まだ外は暗いのだが、そろそろ朝かもしれない。
少しばかりウトウトと微睡んでいたハイネは、ふと、外から流れ込んでくる煙臭さに気付く。
ユーファも同じだったようで、一瞬で目を覚まし顔を上げる。
「なんかヘンなニオイする……。山火事?」
「いや、……火薬のニオイや」
起き上がったユーファは洞穴の入り口にそっと近づく。
付近に火の手は見当たらない。
異様な焦げ臭さに気付いたトキやアキ、ベティもむくりと起き上がる。
「うわ、くっさい。ハイネ、なんか焦がした?」
「う、うちやないし!!」
鼻をつまむアキの近くで寝ていたベティが、ひゅっと表情をこわばらせる。
「このニオイ……ベティは嫌いです。“人が焼ける”ニオイ……」
外を覗き込んでいたユーファに近づいたトキもまた、外へ顔を出す。
「おかしいです。星の位置を見れば、ここは聖都から南西。付近に戦場になりそうなほど広い場所はないはず……」
「風の方向もそっちやな。
俺はアルマツィアの地理はそこまで詳しくないが……。
トキ、聖都の南西にある村はいくつある?」
トキとアキの顔が凍りついた。
「……『麓の集落』、1つだけです」
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