まだ幼いアキにとって、夜通しでの看病は大仕事だ。
ハイネが寝ぼけ眼で起き上がったのに歓喜した次の瞬間、電源が切れたようにアキは眠りに落ちる。
彼が手に持っていた魔力時計、余った解熱剤、勢いは衰えずに燃えている焚火……――

「アキくん、これ全部やってくれたんか……」

ハイネの腕の中で眠ってしまったアキ。
思わず微笑んで、彼の紫の癖毛をそっと撫でた。

『気が付きましたか、ハイネさん?』

時計から声がする。

「うん! ありがとな、カイヤ先生!!
アキくんにいろいろ教えてくれてたんやろ?」

『アキさんの様子は?』

「爆睡や。疲れてたんやろな」

『無事なようで、よかった。
察するに、アキさんはまだ幼い男の子のようですから、雪国の夜での低体温症が気になったのですが……』

「うちが火の傍であっためて寝かせてる。気持ち良さそうだからたぶん大丈夫」

『そうですか。うっかり雪の上で眠ってしまわないように徹夜でお話ししていたんですが……
すごく賢い子ですね。なんでも、アンリ先生の未来の息子さんだとか』

「せやで! 生意気やーなんて思っとったけど、……うちのこと、見捨てなかった優しい子や」



おーい、と男性の声がする。ユーファの声だ。

『どうやら、無事に合流できそうですね』

「あぁ、よかった。死ぬかと思ったわ。
……あっ!! 死ぬといえば!! カイヤ先生、大丈夫やった?!」

途端にカイヤの声がむっとする。

『そう、その話ですけど!!
どうして私に黙ってたんですか?! こっちはそのせいで、アンリ先生が大変な目に……』

「ごっめーん先生!! その話は帰ってから聞くわ!!
無事でよかったわぁ!! また連絡する!! じゃね!!」

『あ!! ちょっ……』

容赦なく通信を切り、ハイネはアキを抱えたまま手を振る。
駆け寄ってきたユーファとトキの顔を見て、安堵のあまり涙が滲んだ。




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