襲いかかってきたのは白の国の兵だった。
雪に馴染むような白毛の馬を駆り、弓を装備した者や大剣を構える者がこちらへ来る。

――つ、強そう。

ハイネは自分の身よりもユーファとトキの身を案じて震え上がる。
あの連中は賊の類ではない。鎧を着こんでいる姿は、“本物”だ。

それでもすぐに杞憂と察する。

ユーファは普段のふざけた態度とは裏腹に、鋭く剣を叩き込み、その流れで銃を放つ。
厄介な弓兵の馬を真っ先に斬り倒し、鎧の隙間を的確に狙った銃弾を撃ち込みトドメを刺す。
馬と共になだれ落ちた兵士は、一瞬で戦闘不能に陥った。

トキは以前振るった制裁の斧とは比にならない重みの一撃を打ち込み、襲いくる剣兵を薙ぎ払って馬上から振り落とす。
体を動かす方が得意だとは聞いていたが、この戦闘力は何で培われたものなのだろうか。

「と、トキ、お前ほんまに田舎娘なんか?
うちの重装兵も真っ青やぞ」

「それはどうも。以前、村一番の怪力のおじ様に稽古をつけてもらっていましたので」

「くくっ。こいつぁ助かる。
そら、追撃部隊が来たで!! そっちは任せるからな!!」

次々に薙ぎ倒されていく兵達を遠目に、ハイネはひとまず安心する。
――これは多分、負けないな。

「ぼくもウバロおじさんの稽古、受ければよかったかな。
今度おじさんが村に帰ってきたらお願いしてみよ……」

その時、地面に這いつくばるハイネは体全体で微かな振動を捉えた。
遠くから、何かが響いてくる……――



「「うわあああああ!!!!」」

最後の1人を始末したところで、後ろからの悲鳴にユーファとトキが振り返る。
状況を理解するより先に、ハイネとアキが潜んでいた地面がごっそりと消えた。


――雪崩だ。




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