荒れ果てた雪原を行く4人。
トキとアキは手を繋ぎ、ユーファはハイネの隣で銃を隠し持つ。
遠くで叫び声や銃声が響いている。
「ユーファ、近すぎやて~。歩きづらいわ」
「別にえぇやろ。惚れてもえぇんやで? ん?」
「よく言うわホンマ」
一見いつも通りにも見えるが、明らかに4人の間の空気が緊張している。
不気味なほど静かなこの辺り一帯だが、遠くの喧騒を聞いていると、すぐにでもその音が襲いかかってきそうで。
「ハイネ、もうちぃとはよ歩けや。チンタラしてっと俺がお姫様抱っこで駆け抜けてまうで」
「しゃーないやろ!! 雪で歩きづらいねん!!
ていうかお姫様抱っことか絶対イヤや!! もっとかっこいいお兄さんにしてもらいたいもん!!」
「こんにゃろ……」
その瞬間、ユーファが即座に表情を変える。
「伏せろ、ハイネ!!」
勢いよく地面に押し付けられたハイネは、何が何だかわからないまま雪に埋もれる。
バツッ、と何か鋭いものが刺さった音がする。
恐る恐る顔を上げてみると、傍の枯れ木に矢が刺さっていた。
「な、なんやこれ……」
「……見つかったみたいや」
ユーファの低い囁き。
トキは片手で大斧を構え、アキはトキの腰に抱きつく。
「向こうから、来てます。1人、2人、……5人です」
「よーし、さすが俺の嫁、視力が狩猟民族並みやな」
「6人、とカウントした方がよろしいですか?」
「冗談やて!」
ユーファは自分が羽織っていた外套をハイネに頭から被せる。
「な、何すんねん!」
「アホ。お前の髪色が、雪の中で目立ち過ぎるんや。それ被って姿勢低くしてろ!」
「アキ、ハイネさんと一緒に隠れてください。ここは危険だから」
「な、なんだよ! ぼくだって……」
「ハイネさんの傍で、守ってください。ね? そしたら姉さんは思う存分戦えますから」
むぐ、と言葉を飲み込んだアキは、ハイネが被る外套の下に潜り込む。
――トキちゃん、さすがアキくんの扱い慣れてるなぁ。
少し誇らしげに、アキはハイネの隣に陣取った。
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