戦場のど真ん中に一般人が立ち入れるはずもなく、ハイネ達はニヴィアンの船着き場で頭を抱えていた。
カルルの街までハイネ達を運びたがる船乗りがいないのだ。当たり前だろうが。
「まぁ、傭兵の名目で戦線に入るってんなら、国の船がついでに乗せていってくれるかもな」
そっけない船乗りの言葉に何か閃いたのか、ユーファはニンマリと笑う。
「よし、お前ら!! 今から傭兵になれ!!」
彼が指差したのは、ニヴィアンにある傭兵ギルドの建物だった。
――傭兵、すなわち何でも屋。
名前を登録した国に従属する形で、雑用からスパイ、暗殺まで多種多様な仕事をこなせるようになる。
世間一般の常識では“まともな職に就けない無法者”という認識だが、近年ではその戦闘力や知識を買われて戦線に送り込まれる戦士となる者も多い。
ハイネはよく知っていた。
傭兵の世界は、彼女の父がその命を懸けて生き抜いた居場所。
この世界にいるユーファの父は傭兵の経験がないらしいのだが、ユーファ本人は生来の奔放な性格もあって、非公式ではあるものの似たような仕事で活躍していたらしい。
ハイネ達を引き連れてギルドの扉を叩いたユーファは、馴染みのギルド長に事情を説明して傭兵登録を進める。
トキはともかく、ハイネは武器を扱えない素人のためにギルド長は渋い顔をしたが、ユーファの顔に免じて不問にしてくれた。
「で、問題はアキ坊なんやが」
傭兵の資格は12歳から得られる。アキはまだ7歳だ。さすがに幼すぎる。
「こればっかりはユーファ王子のツテでもなぁ」
ギルド長は困ったように頭を掻いてから、あぁ、と思いついた。
「“貨物”扱いなら通るかもしれない。君がそれでもいいと言うのなら、だけど」
「か、カモツ……?!」
アキは不服のあまり姉と似たような修羅の形相を一瞬浮かべたが、渋々頷いたのだった。
-84-
≪Back
|
Next≫
[Top]
Copyright (C) Hikaze All Rights Reserved