きらり、きらきら。

揺らぐ光に祈り捧げ。

あぁ、今はもう無き、夢想の光。



「またあの歌を歌っているな。
気分が滅入るからやめてほしいのだが」

冷え切った宮殿の中、大扉の前で番をしている兵士の1人がぼやく。

「頭おかしいんだろ。ボコボコにされてるのに笑って歌ってるなんて、正気とは思えない」

もう1人の兵は退屈そうに欠伸をした。
2人が守る扉の向こうから、鈍い打音が聞こえてくる。
時折小さく、妖精のような声で「あはは」と笑い声までも。

「……あぁ、でも、ちょっとそそられるよな。
だって何しても痛くないんだろ?
何しても、な……」

「馬鹿だな、お前。あんな子供を嬲って何が楽しい?
確かに将来有望の美人だが、せめてあと5年分は成長してもらわないと」

くっくっく、と2人は忍び笑いを漏らす。




「イオラさま、ご満足いただけましたか?
ベティはまだまだ元気いっぱいなので、もっともっと残虐なご褒美でもよいのですよ?」

「まったく貴女は本当にイカれている」

片や緑髪で長身の男、片や金色の髪が美しい黒いミニドレスの少女。
2人の足元には、罪人が見たら震え上がりそうな拷問機具の数々が転がっている。

「イオラさまはベティの大切なおば様を悪逆非道の限りを尽くして殺した挙句にベティを攫ったのです。
身寄りのなくなったベティをここに置いてくださるためなら、ギロチンも磔刑も喜んでお引受けしますですよ。
おば様はもっと地獄のような痛みを味わって逝かれたのですから、ベティにもたくさんたくさん……」

「貴女は私を責めているのか? 縋っているのか?
狂っているとしか言いようがない。これが聖女の末裔とは、片腹痛い」

少女の口元はニッコリと笑っている。目元は髪に隠れてよく見えない。
身に付けた服には血の跡がいくつも滲んでいるが、少女自身の肌は珠のように白いまま。

「これが真に純粋な聖女の末裔ならよかったものの。
……まさか、『聖女と死体の間の子供』だなど。
確かに能力は興味深いが、私の隣に立たせるには値しない……。
玩具どころか、モルモットくらいの使い道しか浮かびませんね」

男はそう言って、鈍い鉄色の焼きごてを暖炉の火にかざす――……




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