不意打ちの拳でアクロが吹き飛ぶ。
「ってーな!! んだてめぇ、霧じゃねぇのかよ!!!
久々の右ストレートがバッチリ決まっちまったじゃねぇか!!!」
「ぐ、グレンさん……?!」
肩を回す長身の男の合間を縫って、もう1人現れる。
「カイヤさん!! お怪我はありませんか?!」
瑠璃色の瞳と白銀の美しい髪の女性――懐かしい声。
「サフィ?!」
駆け寄ってきた彼女――サファイア、ことサフィは、倒れている血塗れのアンリに驚いてすぐに治癒魔法を詠唱する。
「あ、アンリが……アンリがわたくし達を、庇って……!!」
「大丈夫です、今傷口は塞ぎました。
止血が間に合ってよかった……」
「……何故、貴様らがここにいる」
グレンの拳を受けて床に叩きつけられていたアクロがギロリと睨みつけながら問いかけてくる。
「残念だったな。どっかの誰かさんの、『クソみてぇな頭痛がするからぶちのめして来い』っつー勅命だぜ。
カンのいい賢者様は、はたまたどっかの大聖堂でシスターしてた超絶美人を医者代わりに連れてきたってわけよ」
「……くっ……!」
「お、やるか?
『あれから』大分年もとったが、俺はまだまだ現役だぜ?
こんなデケェ目覚ましでも起きねぇ同僚とは違ってな!!」
「――ふん。時期尚早といったところか。いいだろう、ここは素直に退く。
この世界は『後回し』だ。やっぱりここは、――イレギュラーだ」
すうう、とアクロの姿が消えて行った。
身の毛もよだつ不気味な気配はなくなり、そこはただの研究室に戻る。
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