へたりこむカイヤの長い青髪の一部が切れ、ヒラヒラと舞い落ちる。
驚きのあまり呼吸すら忘れている彼女の前に、アンリとマオリが駆け寄った。

「……何か、いるみたいですね?」

アンリは上着の下から小さなナイフをゆっくり引き抜く。

「ちょ、アンリ先生!! なんてもの持ってるんですか!!」

「カイヤさんも、一本忍ばせておくと便利ですよ……」

「そんな冗談言ってる場合……ッ」

そこには何もいない。
なのに、『何かがいる』気配がする。
何も見えないが、アンリは手に持つナイフを目の前の空間に滑らせた。



「――そんなもので俺を殺せると思うか?」

声がする。
部屋のどこかからか、その音の出る元がわからない。

「どちら様です?
いつからここにいたのでしょう?」

「俺に姿はない。――互いがそこにいると認識した時にできあがる、『概念』だ」

カイヤは目を見開く。

「その声……その話……、なんで、――……」

「か、カイヤさん、ご存じですの?」

「だって、これって、なんで、……この声……あ、あ、……」

――アクロ……

すう、と煙のように現れたその姿は、まさに……――





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