日が暮れていく。
結局、丸一日かけてカイヤの雑務を分担しただけの時間となりつつある。
ハイネがアンリに話した『歴史』は、ここでは当てはまらない杞憂に過ぎなかったのか――
カタカタカタ、と小さく窓が揺れている。風だろうか。
外は淀んだ曇り空だ。今夜あたり、一雨来るかもしれない。
「最近、この研究室もガタが来てて……。
窓も引っ掛かって、ちゃんと開かなくて……」
息抜きにカイヤが窓際に寄る。
その流れを目で追うアンリ。
結局解答を見ながら答え合わせをしているマオリは少し身震いした。
「何だか寒気がしますわ。隙間風かしら」
「あー、やっぱりそう思います?
窓の立てつけ、おかしいのかなあ……」
ブツブツとぼやきながらカイヤが窓枠を観察している。
そんな彼女の後ろの空間を見つめるアンリはそっと立ち上がった。
注意深く、ゆっくりと周りに目を凝らす。
「アンリ先生、どうしたんですか?」
「……いや、なんか……何かの気配のようなものが……」
「えぇっ?! い、嫌ですよ、こんな天気だからって怪談話とかは……」
その瞬間、何かが部屋の明かりを反射した。
「カイヤさん、伏せて!!!」
「ひえっ?!」
シュンッ、と風切り音がした。
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