ザザ、ザー……。
新調した機械が目を覚ました雑音がする。
「よかったぁ!! ちゃんと動いたぁ!!
クレイズ先生、やっぱさすがやなぁ」
「機械自体はさほど手を加えてないよ。問題はこっち」
昼夜かけて編み出した『答え』。
クレイズはその数字を機械に打ち込む。
「思ったより搾り込めたから、まだ何とかなりそう。
あとは他の世界のカイヤの“うっかり”率がそんなに高くないことを祈るばかりだ」
小さな画面に映し出される数字の羅列。
クレイズが提示した条件となる数字に当てはまる座標が次々に抽出されていく。
「千件……二千件……。……お、多いなぁ……」
「う、うちも手伝うから……」
表示された座標に1件ずつ呼びかけてみる。
これで応答があれば、『世界線観測器』を持ち、かつ『誰かの応答を待っている』世界。――つまり、ハイネの世界である確率が高い。
「こんにちはー!」
「……返事がないね。はい、次」
「どーも!!」
「……ここも駄目だ」
「まいどおおきにー!!」
「……ここもか」
地道な作業を繰り返しているハイネとクレイズの後ろから、ユーファやトキ、アキも顔を出す。
「なんや、おもろそうなことしてんな?
俺の美声で歌でも流せば、ばっちりアンコール飛ばしてくるんちゃう?」
「んもう、ユーファは黙っとってぇな!! 今忙しいからツッコミ待ちなら後にして!!」
がはは、と笑っている彼の横で、トキとアキが興味深そうに機械を見つめている。
「もしかして、ハイネさんの世界が見つかれば、そこには若い頃の父さんがいるんでしょうか……。
ちょっとお話してみたい気がします」
「ぼくも!! ね、見つけたらぼくらにも代わってよ」
「あぁもう、若い衆、少しおとなしくしててくれないかな。応答があっても聞き逃したら馬鹿みたいだろう?」
1つの雑音でも聞き逃さないように神経を張り詰めているクレイズが思わずそう言い返す。
そんな調子が小一時間ほど続いた頃。
検出した座標候補が残りいくつかになった段階で、何かが聞こえた。
『……か……、――きこ…………、わ……』
その場の全員が顔を見合わせる。
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