驚きのあまり振り向いたハイネは、潤んだ瞳をこぼれそうなほど見開く。
あの気怠そうな表情。血の繋がりを感じてちょっとだけ自慢だった同じ色の髪。
もうハイネの世界では見つからない姿の、“彼”。
「あ……、おと……」
言いかけて、ぐっと堪える。
そこに立っている“メノウ”の姿を見たハイネは、力が抜けたように座り込んでしまう。
ゆっくりと近づいてきたメノウは、へたり込んでいるハイネに目線を合せるように片膝をつく。
「お前が噂の“隠し子”か。へぇ、我ながらよう似とる。
この悪ガキ、よくもワイを陥れてくれたな?」
言葉に反して、彼は微笑んでいた。
ずっと会いたくて、夢の中でも探していた温もり。
気付いた時には、ハイネは堪えきれずに泣き叫んでいた。
「おとんのバカ――――ッ!!!
なんでうちを置いて死んでもうたんや!!! またな、って約束したのに、なんで、なんで?!
なんで帰って来なかったんや!!! ずっと待ってたのに!!! 寂しくてもガマンしてたのに!!!
うちな、頑張ったんだよ……?! 頑張って、学校入って、カイヤ先生と、いっぱい研究して……――!!!
なのに、なんで……」
泣き崩れる小さな背中を見つめるジストは、観念したように笑っていた。
「メノウ。少しこの少女との時間をとってやってくれ。
私達のくだらない痴話喧嘩の原因として追及するには、些か良心が痛むのでな……。
そちらの友人達には、茶でも振る舞おう。付き合いたまえ」
わかった、と答えたメノウは、ハイネに別の部屋へ来るよう促す。
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