突然やってきた若い3人組の姿に、ブランディア王城の門番は訝しげな顔をする。

「もー、話のわからん奴やなー!!
誤解や言うてんねん!!」

そこはかとなく見覚えのある赤い髪の少女が「とにかく中へ入れて王に会わせろ」と煩いのだ。

「……どうする?」

もう1人の門番に問いかければ、肩を竦めて溜息を1つ。

「嬢ちゃん、イタズラなら他をあたりな。今忙しいんだから」

「子供扱いしよってからに~!!」

「騒がしいな」

睨み合う門番と若者の間に第三者の声が割り込む。
暗い茶髪で褐色の男だ。

「あー、隊長。困ってるんですよ。このガキが王に会わせろって」

「ガキ言うな!」

「王に?」

男は鋭い薄黄の瞳で少女を品定めする。
頭の先から足元まで眺めてから、ふと、何か見覚えを感じた。

「……俺が事情を聞こう。ついてこい、お前達」

えっ、と驚く門番達を余所に、その男は若い客人を招き入れる。





――取調室、とでも言うか。

質素な小部屋に通され、客人――つまりハイネ達は簡易的な椅子に座らされる。
向き合う形で座った男は、手を組んで鋭く見つめてきた。

「用向きを伺おう」

「ユーファを解放して」

刺さるような視線が注がれる。

「……ただの子供ではなさそうだな。何故その者がここにいると知っている?」

うっ、と怯むが、負けずに身を乗り出す。

「そいつ、別に悪さしようとしてたんじゃないんや。
“うちに会いに”この国まで来てて、でも捕まったって聞いて」

「……お前に?」

緊張のあまりガチガチと震える顎を何とか抑えてハイネは言葉を探す。

「あ、あの。うち、ユーファの父親の……その……ほ、ほら、“隠し子”?!
うち、ずっとオアシスに隠れて住んでたんやけど、バレてもうたらしくて。
それで、ユーファがほんまに隠し子なんかおるんかって、オアシスまでこっそり確認に来とって」

後ろで座っているトキとアキが若干目を丸くしてハイネを見つめる。
勢いのまま出まかせの物語が並べられていく。

「……隊長に隠し子……?」

その男はボソリと呟く。
もう一度彼はハイネの顔をまじまじと眺める。

「……では聞くが。お前の母親は誰だ?」

そう来たか、とハイネは思わず苦笑いを漏らす。
この世界の“実母”がどうしているかはわからない。
無難にこの場を乗り切れる無名の女性の名を挙げれば、あるいは……――

「え、と。ラリマーです。その……俗に言う『夜の人』……なんやけど」

眉間に皺を寄せた男は、そうか、と呟くと天井を仰いだ。




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