「いててて……。
なんや、乱暴な連中やなぁ……」
後頭部を押さえて起き上がると、粗末な小部屋の中である事に気が付く。
――捕まった、か。
ふう、と深い息が漏れる。
薄々覚悟の上ではあったが、いざ本当に捕まったとなると自分に対して呆れてしまう。
「アクイラの王子か。面白い……いや、馬鹿な男が捕まった、とでもいうか」
鉄格子越しに現れたのは赤の国を治める王――ヴィオルだ。
「ちょうどいい。その昔、若い頃だ。
貴様の母親には散々苦汁を舐めさせられたものよ。
あぁ、貴様はあの憎らしい父親にも似ているな。
さて……どうしてくれようか?」
「言っとくが、俺を捕まえたところでお袋も親父も動かん。なんせ出来の悪い子供やからな、俺は。
ま、好きなようにすればえぇ。煮るなり焼くなり……」
「そうか。ならば……」
ヴィオルの口角が釣り上がる。
「国ごと掌握してやろう。
緑の国? あの程度、我が国の軍力ならば一捻りだ。
貴様が何故、この赤の国にいたか……その理由を“作る”事くらい、造作もない。
そう、これは我々の“反撃”である。正当な旗のもとに、ミストルテインを潰してやろう!!
存分に利用させてもらうぞ、忌々しいネズミめ!!」
ユーファの顔色が変わる。
目の前の狂王が何を企んでいるのか……――“それだけは”、あってはならない理由だというのに。
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