オアシスの門の近くにある馬屋で馬を借りる。
栗毛色の馬を二頭選び、片方はハイネが、もう片方はトキとアキが跨る。

「いやー、あのユーファ?とかいうやつのおかげでお金に余裕が出来て助かったわぁ!
なぁトキちゃん、ところでうち馬とか乗った事ないんやけど……」

アキを前に抱え、慣れたように馬の背に乗るトキは首を傾げた。

「簡単ですよ。乗って手綱を握ればいいだけです。大丈夫ですよ、私ができるんですから」

「そ、そういうもんかな?
こ、こうやって……うわああああ」

馬が嘶き後ろ足で立つ。その様子を見ていた馬屋の主人は大笑いだ。

「はっはっは!! 馬に乗り慣れとらん旅人なんざ初めて見たで、嬢ちゃん!
手綱は少し緩めに持つんや。馬が嫌がるからな。後は行きたい方向に誘導すりゃいい」

「んな事言っても、おっちゃ――――ん!!
この馬、元気すぎやなぁ――――い??!!」

勝手に駆け出してしまった馬に乗るハイネはどんどん遠退いて行く。

「姉ちゃん、早く追いかけないとはぐれちゃうよ」

「そうですね。行きましょう。
では、お借りしますね。……はっ!」

軽やかな蹄の音が暴れ馬の後を追って走り出した。

「また随分と様になってるな、あっちの嬢ちゃんは」

手を振って見送る馬屋の主人はふくよかな腹を揺すって笑った。





馬に翻弄されてしばらく突き進んだ先の砂漠に、何か尋常ではない光景が広がっている。
慌ててハイネは手綱を引っ張り馬を止める。
目先に散らばっているのは数頭の馬と武器のようなもの。
どこかの旅商が賊にでも襲われたのだろうか。

少しして追いついてきたトキとアキも馬を止める。

「アレ、なんやろ?」

「ちょっと待ってください、ハイネさん。私が先に様子を見ます」

ここぞとばかりに右手で軽々と斧を手にし、トキは馬から降りてそこへ近づく。
しばらく遠巻きに彼女の様子を伺っていたハイネとアキだが、彼女に手招かれてそこへ駆け寄った。

間近で見ると、やはり倒れていたのは馬。そして人だ。
そして見覚えがある。
――確か、ユーファを取り巻いていた兵士達だ。

「ど、どうしたん?!
怪我しとるみたいやけど……」

「あぁ、貴女はユーファ様といらした……。
実は、ユーファ様が……」

傷だらけの兵が涙目で顛末を語る。



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