一体何が起きているのか。ハイネの理解が追いつかない。
確か、別の世界の姿を見つけようと、カイヤが発明した機械を使って、目を閉じて……――

「そしたら、ここに来た……のですか?」

細かい事情は伏せつつも、ハイネは経緯を語る。
マオリによく似た婦人と、先程出会ったトキの2人は、囲炉裏の傍で正座をしてハイネの話に耳を傾けていた。

「わたくしにも何がどうしてこうなったかはよくわかりませんわね。
主人が戻ったら、もう少し詳しく聞かせてくださる?」

ガララ、と玄関で音がした。

「あら、噂をすれば。
お帰りなさいまし、“アンリ”。まぁっ、“アキ”もお帰りなさい。
冷え込んできましたでしょ?」

トキに勧められてお茶を啜っていたハイネは、玄関から入ってきた男性を見て噴き出した。

「あぁどうも。お客人ですかな、珍しい。トキの知り合いです?」

「お帰りなさい、“父さん”。えぇと、私もついさっきお会いしたばかりの方で……」

「あ、あ、あ、……アンリ先生やんけ!!!」

まだ幼い少年と手を繋いでいるその男性。
まごう事なき、担任の彼だ。





「貴方の教え子ですの?
まだ随分とお若いようだけれど」

「えぇ? すみません、ちょっと記憶にないんですがねぇ……」

「おかしい!! ゼッタイおかしい!!
だってうちの担任やで、アンリ先生?!
ていうか、さっきも買い物行く時会ったし……」

「担任、って……。
父さんは私が生まれる前からずっと、この集落の学校で先生をしているんです。
貴女は多分……この村の方では、ないですよね?」

察するに、トキを始めとしたここにいる4人は家族なのだろう。
混乱するハイネは言葉を失う。
――だって、アンリ先生、まだ独身やし。トキちゃんくらいの娘がいるようには、見えないし……。

「……頭でも打ったんじゃ?」

アンリと手を繋いでいた少年がボソリと呟いた。

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