――これは、“2人”が出会うまでの話。

最後まで寄り添い合った、かけがえのない絆の始まりの物語。





青の国カレイドヴルフ。大海原をすぐ隣に抱える、暖かな王国。
この楽園を治める王家には2人の子供達がおり、日に日にすくすくと育っているのを皆が目を細めて眺めていた。

上の王女リシアは王妃譲りの凛とした顔立ちをしており、聞けばとても賢く、音楽も嗜む才色兼備な姫だ。
少々お転婆が過ぎるところは、父王が目に入れても痛くないと溺愛する様から目を瞑ろう。

そんな王女の4つ下の弟として生まれ落ちた王子コーネルは、このオリゾンテ王家の今代が始まって以来待望の男子。
王家には分家が存在し、当初はそちらに生まれた男子を跡取りにする方向で動いてはいたが、現王の血を継ぐ男子が生まれたとあらば満場一致でその子が次代の候補となった。
誰も彼もが王子の誕生を喜び、祝い、その嬉しさのあまり国王夫妻がその年の半分以上の予算を王子誕生の祝賀に注ぎ込んでしまい、予算表を見つめる執事の目だけが曇っていたのは裏側の話。
或いは、王子の誕生に浮かれる大人達の陰で“用済み”とされてしまった分家の息子の子供心に差した陰も、本人以外は知らないのかもしれない。

ところが、である。
姉王女リシアの溌剌とした愛らしい噂の一方で、肝心のコーネルはというと、大した話も特にない凡庸な子供だった。
ただそれだけであればそこまで取り沙汰されるものでもないが、コーネルはまだ幼いながらも気難しく、神経質で、人見知りの激しい性格をしていた。
一部の者は“昔の国王陛下のようだ”と笑っていたが、城の者達はほとほと困り果てていた。

まず何にしても母である王妃の指示を仰ぐ。
そして必ずと言っていいほどに、リシアが傍にいないと目も合わせてくれない。
何が原因で息子がこうなってしまったのかは両親も姉も検討すらつかない。
コーネル自身も幼く、自らの心の内を表現できる言葉をまだ知らない。
少しばかり病がちな体質も相まって、普通の子供ならばじっとしている事さえできない年頃だというのに部屋に篭ってばかりいた。

表情に乏しく、子供が喜びそうな玩具や絵本を与えてもまるで興味を示さない。
かといって学力に秀でているわけでもなく、王子としての務めである剣術の修行も嫌がって受け付けない。
一体何ならこの子の心を動かせるのか。
リシアも、可愛い弟のためにあちこちへ連れ回したり一緒に遊ぼうと誘ったりしていたが、コーネルはただ黙ってついてくるだけだった。



そんな難しい性格の彼の気をひいたのは、誰もが予想しなかったがとても身近なものだった。

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