ダインスレフの頭上、晴れなかった雲の切れ間から、青空が顔を出す。



「えー、それでは“三代目”所長の就任を祝いまして・・・カンパーイ!!」

「カンパーイ!!」

グラスが触れ合う音が次々と響き渡る。

「いやはや、女所長ですか。
これからは女性も社会を先導していく時代ですかな」

重鎮の老人達に、新たな所長は艶やかな笑顔で対する。

「前副所長の遺言、でしたっけ?
あの人は実に有能な青年だった。そんな彼に推される貴女なら、未来も明るい!」

「身に余る光栄ですわ、皆々様。
えぇ、えぇ。必ずや御覧に入れましょう。医療、そして科学の目覚ましい発展を。
そう遠くないうちに、この国にも青い空が戻るはずですわ」

おほほほ、と新所長は笑う。
囃し立てる取り巻きも、酒の勢いで盛り上がっている。



「・・・そういえば、副所長はウバロ・ブラーゼン氏だとか?
なんでも、ローディ・シュタイン所長の古い同朋ですと。
この場にはいらっしゃらないようだが・・・」

「あぁ、あの人は今日は別の用事で。
新設される孤児院の院長も兼ねているとかで、残念ながら今回はそちらを優先しているそうで」

「ほほう、孤児院ですか。
これからこの街はどんどん発展する。子供達にも優しい国にせねば、ですな」

豪華な食事を摘まみながら、酒を片手に来賓は談笑する。



そんな人々の合間を縫って、せっせと皿を運ぶ3人組。

「あぁ、羨ましい限りじゃ。
妾もこんな馳走を腹いっぱい頬張りたい・・・」

「まったくだぜ。アタシは剣振り回す方が性に合ってんのによ。
ゲストにいいフェイスするのも疲れるぜ・・・
――まぁっ、いらしてくださったのですね、ささ、どうぞこちらへ♪」

酒のボトルを抱えるレイクは眉尻を下げている。

「姉御、いつもあれくらいキラッキラな笑顔でいてくれたら、あっしもやる気が出るんですがねぇ・・・」

「ええい、手を動かせ、手を! バカレイクめ!!
あっ、はぁい、追加のお料理ただいま参りまぁす♪」

「エマも・・・いつでもそれくらい可愛ければ・・・はぁ・・・」



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