カルル村の住人や作業員達に見送られ、飛空艇は飛び立つ。
目指すはミストルテインのフロームンド、ユーディアの元である。

懐中時計をぎゅっと握りしめ、カイヤは舵をとる。
その瞳は真っ直ぐと前を見つめており、心に秘めた決意を感じさせる。



「それで、ユディから連絡はあったの?」

ジストが出した手紙の返事をアンバーは気にしている。

「うむ。実は代わりにユーディアの母から返事が来たのだ。
我々の手紙は読んだが、返事を書く元気がないらしい」

「えっ。具合でも悪いってこと?」

「かもしれない。
彼女は幼い頃から病弱だったからな」

窓を見つめるカルセに目をやると、ユーディアが心配なのか浮かない横顔だ。



緑の国方面へ飛空艇を進ませる。
眼下の景色が雪国から海国、そして森林地帯へと移り変わる。
この鮮やかな色の変化を目の当たりにしたのは、ジスト達が初めてかもしれない。
宝石のようにキラキラと光り輝く海を、コーネルはじっと見つめている。

「ほら、見てみるがいい。
あの白亜の城、あれはカレイドヴルフの城ではないか?」

「・・・そうだな」

生まれも育ちもあの城だ。何も珍しくはない、日常の光景だった。
だが空から見つめるその城は、どこか現実感のない緻密な模型のよう。
窓にかじりつくようなジストとコーネルの後ろをメノウが通りかかる。

「世界ってのは存外デカいもんなんやな。
行けるとこは全部行ったかと思ったが、全然やわ」

「メノウでさえそう言うのならば、私達などまだまだだな!
はっはっは!!」

雑談を交わすジスト達の反対側の窓の傍にはサフィが立っている。
彼女も食い入るように風景を見つめているが、ふと、何か異変に気が付く。

「あの、ジストさん!
ちょっとこちらに来ていただけませんか?」

「どうした、サフィ?」

つかつかとやってきたジストはサフィの隣に並ぶ。
するとサフィは森の方を指差した。

「あそこ、燃えているみたいなんです」

「む?! あそこは!!」

ミストルテインから北西の方角に位置する森林地帯が燃え盛っているのが見える。
黒い煙が立ち上っており、周辺の木々が黒焦げだ。

「カイヤ、カイヤ!!
すまないが着陸してくれないか?!」

「えっ?!
フロームンドはまだ先じゃ・・・」

「森林が燃えている!
あそこは確か、“アークエルフ”の集落がある場所だ!!」

「わ、わかりました。
じゃあすぐそこに見える草原地帯で降ります!」

飛空艇は徐々に高度を落としていく。




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