世界間の移動というものは、着地点くらい決められないものなのか。
またもジストは派手に地面に叩きつけられて唸るハメになった。



はっとして起き上がると、眩い星空が頭上に広がっていた。
このしっとりと肌につく冷たい空気、キンと澄んだ風、そして・・・――

「アルマツィアの近くか、ここは?!」

周りでうんうん唸っている仲間達の中、慣れたかのようにアクロは立ち上がる。

「戻ってきたらしい。怪我はないか、ジスト?」

「あぁ、大丈夫だ」

「そうか。では俺は行く」

突然アクロは背を向けた。

「行くって、どこへ?」

「俺がお前達に同行したのは、異世界での案内のため。もう俺は不要だろう。
ジスト、ここからはまた別の道だ。
そしてもしもまたお前の存在に揺らぎが生じたとしたら、俺はまた現れる。
じゃあな」

「アクロ、待っ・・・」

引きとめようと手を伸ばしたが、彼の姿は消えてしまった。

――彼は概念のようなもの。お互いが“そこにいる”と認識して初めて出来上がる、幻のような存在。

その想いが一方でも途切れれば、彼はそこから“いなくなる”。
ジストは不満そうにアクロが消えた先を見つめる。
礼も言わせてくれないとは、つくづく不器用な男だ。



アクロが消えてから、続々と仲間達は起き上がる。

「あいつ・・・また消えたのか」

「そうらしい。そしてまた私に何かあれば現れるであろう、と」

「ちっ。二度と出てこさせないようにしてやる」

「お、いいねそれ。アクロなんかいらないくらい俺がジストを守るぜ~!みたいな?」

「だ、黙れ、死に損ないの肉壁が・・・!」

「青春もえぇけどひとまず街行こうや。
夜のアルマツィアで外出歩くなんざ死に急ぐようなもんやで」

カッ、と噛みつきそうなコーネルを宥めつつ、聖都を目指す。



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