「よーし! 皆、心して聞きたまえ!!
我々はこれからブランディアへ向かう!!
細かい事は省くが、打倒ヴィオルだ!!」

「要点省きすぎてヴィオル王がただの不憫な人になっちゃってるよ! ジスト!」

アンバーの野次に、ジストは仕方なさそうに説明する。

「私はクロラ・・・もとい新たなる教皇より、極めて重大な命を賜った。
今、戦乱の渦中であるブランディアにおいて、ヴィオルが持つ“王家の指輪”の今後が危ぶまれている。
その指輪の安全を確保するのが直近の目標だ」

「指輪・・・」

カルセはやはり何かおぼろげに思うところがあるようだ。

「そんなにすごい指輪なの? お宝? 一攫千金的な?
俺にも分け前くれる? なんちゃって!」

「貴様は馬鹿か。そんな浅ましい事のためにあのジストが動くと思うか?」

「ですよね」

ジストはやる気に満ち満ちた風に胸を張る。

「指輪については、時が来たら皆にも説明しよう。今は目を瞑ってくれたまえ」

はーい、と気の抜けた返事がアンバーから出た。



「おとん、また仕事?」

父親の膝の上で聞いていたハイネが上を向く。

「せやな。また長くなる」

「うちはお留守番でしょ。わかってる」

しゅん、と寂しそうに彼女は呟く。

「オアシスで待っててな。
・・・この仕事が終わったら、もう危険な仕事はせん。約束する」

「ほんま?」

「あぁ。ある程度、もう“見えてきた”しな」

チラ、と横に座るカイヤにメノウの視線が移動する。
“オトナの話”が交わされたのだろう。幼心にも何となく察する。

「ハイネさん、がっつり勉強頑張ってくださいね。
ボク、学校で待ってますから」

「・・・わかった!
ゼッタイ行くで! 見ててな、カイヤお姉ちゃん!」

「はい!」

窓の向こうでは尚も粉雪が舞っている。
これから向かうは砂漠の国。銀世界も見納めだ。





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