弾丸は壁に穴を開け、白い煙を立たせた。
突然の音に怯んだ一行の間を抜け、つかつかと歩いてくる影。
――見慣れた後ろ姿。
「メノウさっ・・・!!」
「そいつを放せや、外道」
「あぁ、出来損ないの野良犬さんですか。
その銃口はそこで座り込んでいるお姫様に向けるものですよ」
「“雇い主”を殺す馬鹿がどこにおんねや」
「そうですか。それはそれは、大儀な事です」
壁にもたれながらよろよろと立ち上がったクレイズはクスリと笑う。
「遅いよ、傭兵君・・・」
「あぁ、すまん。途中でちと“知り合い”に会ったもんでな」
「・・・“知り合い”は?」
「いい。――やれ」
クレイズは静かに詠唱を始める。
「・・・クレイ、」
「悪いんだけど・・・いずれまた殺しに行くよ・・・君を」
「そう。僕はいつでも大歓迎。ついでに、気が変わってくれると嬉しいんだけど」
「ふふ。ないね。永遠に」
ふわ、と体が何かの光に包まれるのを一行は感じた。
「どこへ飛ぶかは保証できないから・・・。
僕ももう年かな、なんてね・・・」
シュン、と目の前が真っ白になり、意識が途絶えた。
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